「最新AIで判明した驚きの真実」
そんな見出しで、ヴォイニッチ手稿がまた話題になっています。

答えから言うと、ヴォイニッチ手稿は、2026年10月の今もまだ読めていません。
AIで「解読成功」と言われた話も、学者のあいだでは認められていないんです。
では、なにが新しくわかったのか。
2026年7月に、ページの順番がそもそもちがっていたかもしれないという論文が出ました(Digital Medievalistの論文)。
どんな本か、なぜ読めないか、新しい説の中身を、図書館や論文からまとめました。
全ページを自分の目で見る方法も、最後にのせています。
この記事のポイントは以下の4点です。
- ヴォイニッチ手稿は、読めない文字と、ふしぎな植物やお風呂の絵がならぶ古い本
- 羊皮紙は1404年から1438年ごろのもので、13世紀のロジャー・ベーコンの作ではない
- AIの「ヘブライ語説」や2019年の「解読成功」は、どれも認められていない
- 全ページはイェール大学の図書館のサイトで、だれでも無料で見られる
ヴォイニッチ手稿とは?なぜ読めない?中身と作者のなぞ
- ヴォイニッチ手稿とは?いつ・どこで見つかった本か
- ヴォイニッチ手稿の内容は?植物・天体・お風呂など6つの部分
- ヴォイニッチ手稿はなぜ読めない?解読できない3つのわけ
- ヴォイニッチ手稿の作者は?ロジャー・ベーコン説が消えた理由
ヴォイニッチ手稿とは?いつ・どこで見つかった本か

ヴォイニッチ手稿は、だれにも読めない文字で書かれた、作者のわからない古い本です。
今は、アメリカのイェール大学のバイネッケ図書館が持っています(バイネッケ図書館)。
図書館での正式な名前は「Beinecke MS 408」です。
日本では「ヴォイニッチ写本」とも呼ばれます。
検索では「ボイニッチ手稿」と打つ人もいますが、同じ本のことです。
名前は、1912年にこの本を買った古書商、ウィルフリッド・ヴォイニッチからとられました。
買った場所は、ローマに近いフラスカーティにあるイエズス会の学院です(バイネッケ図書館)。

もっと前の持ち主もわかっています。
はっきりわかっている最初の持ち主は、神聖ローマ皇帝のルドルフ2世です。
金貨600ドゥカートで買い、13世紀の学者ロジャー・ベーコンが書いた本だと信じていたそうです(バイネッケ図書館)。
ヴォイニッチが亡くなったあとは、何人かの手をへて、1969年にバイネッケ図書館へ寄贈されました(バイネッケ図書館)。
それからは、2014年から15年の展示で一度だけ外に出た以外、図書館から出ていません(バイネッケ図書館)。
ヴォイニッチ手稿の内容は?植物・天体・お風呂など6つの部分
文字は読めませんが、ほぼすべてのページにある絵から、中身のあたりはつけられています(バイネッケ図書館の目録)。
図書館は、絵によって6つの部分に分けています(バイネッケ図書館)。
| 部分 | 描かれているもの |
|---|---|
| 植物 | なんの植物かわからない植物の絵 |
| 天文・占星術 | 太陽や月、星の円い図。星座の印が入ったものもある |
| お風呂(生物学) | 液体につかったり、管でつながったりしている女性たち |
| 宇宙論 | 折りたたまれた大きな紙に描かれた、9つの円い図 |
| 薬 | 薬草や根と、入れ物の絵 |
| レシピ? | 絵のない文章。星のような印で1つずつ区切られている |
植物の部分には、113種類の、なんの植物かわからない絵があります(バイネッケ図書館の目録)。

お風呂の部分は、図書館の目録でも、いちばんなぞめいた絵とされています(バイネッケ図書館の目録)。

天文・占星術の部分には、まん中の動物のまわりを、星を持った女性たちが円になってかこむ図があります。

宇宙論の部分は、たたまれた大きな紙を広げると、円い図がいくつもつながっています。

薬の部分では、筒のような入れ物の横に、根や葉がずらりとならびます。

本の大きさは、たて22.5cm、よこ16cmほどです。
羊皮紙で、今残っているのは102枚です(バイネッケ図書館の目録)。
ヴォイニッチ手稿はなぜ読めない?解読できない3つのわけ

ヴォイニッチ手稿が読めないわけは、大きく3つあります。
1つ目は、手がかりになる対訳がないことです。
古代エジプトの文字は、同じ文が別の言葉でも刻まれたロゼッタ・ストーンで読めるようになりました。
ヴォイニッチ手稿には、そういう対訳も、文字の読み方の辞書もありません(ビジネス+IT)。
2つ目は、何語なのか、暗号なのかさえわからないことです。
持ち主の図書館は、暗号として読もうとした試みはどれもうまくいっていない、と書いています(バイネッケ図書館)。
図書館の目録にも、解読したと言った学者は何人もいるけれど、ほとんどはとけていない、とあります(バイネッケ図書館の目録)。
意味のない文字をそれらしく並べただけ、という説まであるんです(ビジネス+IT)。
3つ目は、ページの順番がバラバラかもしれないことです。
2026年の論文は、今の本はページの順番がちがっていて、それが読めなかったわけの一部かもしれない、としています(Digital Medievalistの論文)。
順番がバラバラの本は、読むのがずっとむずかしくなりますよね。
この説は、次の章でくわしく見ていきます。
ヴォイニッチ手稿の作者は?ロジャー・ベーコン説が消えた理由

作者は、今もわかっていません。
昔は、13世紀のイギリスの学者ロジャー・ベーコンが書いたと考えられていました。
この説が消えたのは、羊皮紙の年代を測ったからです。
アリゾナ大学のチームが4つのページから小さなかけらを取り、炭素の量で年代を調べました。
その結果は、1404年から1438年です(NBC News)。
13世紀に生きたベーコンが書くことはできない、というわけです。
レオナルド・ダ・ヴィンチの作とする説も、同じ理由で否定されました(ARTnews JAPAN)。
ただし、わかったのは羊皮紙になった動物が生きていた年代です。
文字を書いた年そのものではありません(NBC News)。
書いた人は1人ではなく、5人いたとする研究もあります。
文字の形やくせをくらべた2020年の研究です(Manuscript Studiesの論文、ビジネス+IT)。
ただ、人数にはほかの意見もあり、決まったわけではありません(ビジネス+IT)。
ヴォイニッチ手稿の解読は?AI解読成功の話と2026年の新説
- ヴォイニッチ手稿のAI解読は成功した?ヘブライ語説のその後
- ヴォイニッチ手稿の解読成功のニュースは本当?2019年の騒ぎ
- ヴォイニッチ手稿はページの順番がちがう?2026年の新説
- ヴォイニッチ手稿はどこで見れる?全ページのPDFと日本語の本
ヴォイニッチ手稿のAI解読は成功した?ヘブライ語説のその後

AIで解読できた、という話は、2018年にもありました。
カナダのアルバータ大学のチームが、400の言語の見本とくらべて、もっとも近いのはヘブライ語だと発表したんです(アルバータ大学)。
文字の順番を入れかえた暗号だと考えて読むと、80%をこえる単語がヘブライ語の辞書にあったそうです。
最初の文をGoogle翻訳にかけると、「彼女は司祭、家の主人、私と人々にすすめた」のような文になりました。

でも、チーム自身も、単語がつながって意味をなすかはわからないと言っています。
古いヘブライ語の専門家に確かめてもらえず、意味はなぞのままだ、という話でした(アルバータ大学)。
このとき広まった「97%」という数字も、手稿がヘブライ語である確率ではありません。
言葉の種類を見分ける方法の、実験での正しさの数字でした(ビジネス+IT)。
結局、手稿の全体を読むことはできず、解読成功とは認められていません。
ヴォイニッチ手稿の解読成功のニュースは本当?2019年の騒ぎ

「解読成功」で検索すると、2019年の話も出てきます。
イギリスのブリストル大学の研究者が、ラテン語系の言葉の古い形で書かれていると発表したものです。
ところが、ほかの学者から反対の声が相次ぎました。
大学は、サイトからこの研究の記事を消しています(ARTnews JAPAN)。
このように、「解読した」という発表は何度も出ては、認められずに終わってきました。
2026年10月の時点でも、中身を通して訳せて、学者に広く認められた読み方はまだありません(ビジネス+IT)。
ChatGPTなどのAIに読ませると、それらしい文が出てくることはあります(ビジネス+IT)。
でも、元の文を確かめようがないので、AIがそれらしく作った文と、本当の訳の見分けがつかないんです(ビジネス+IT)。
SNSで「AIで読めた」という話を見かけたら、まずは話半分で聞いておくのがよさそうです。
ヴォイニッチ手稿はページの順番がちがう?2026年の新説
今回話題になった新しい説は、中身を読んだものではありません。
本のとじ方がまちがっていたのでは、という説です。
論文を出したのは、マルタ大学のコリン・レイフィールドさんと、アメリカ中世アカデミーのリサ・フェイギン・デイヴィスさんです。
出したのは2026年7月10日です(Digital Medievalistの論文)。

昔の本は、二つ折りにした羊皮紙を何枚か重ねて小さな束にし、その束をいくつもとじて作ります。
ヴォイニッチ手稿も、今はこの形でとじられています。
2人は、意味がわからなくても、単語の使われ方の似ぐあいをはかれる方法でくらべました。
すると、同じ1枚の羊皮紙のページどうしが、ほかの本よりずっとよく似ていたんです。
今のとじ方では、同じ1枚を二つ折りにした左右の半分どうしが、何ページもはなれています。
そこで論文は、もともとは二つ折りの1枚ずつを、順に読む束だったと考えました。
それを、あとからだれかが、ふつうの本のように重ねてとじたので、順番がバラバラになったというわけです。
絵にも手がかりがあります。
とじ目のところで切れた川の絵が、今は何ページもはなれた、同じ1枚のもう半分のページの端につながっているんです(Digital Medievalistの論文)。
デイヴィスさんは、だれか1人の天才が作った本ではなく、何人もで使い、世代をこえて伝えた冊子の束だったのかもしれないと話しています(ARTnews JAPAN)。
ただし、元の順番の並べ直しが正しいかは、手稿が読めるようになるまでわからない、と論文も書いています(Digital Medievalistの論文)。
植物の部分には、正しい順番がそもそもないかもしれない、ともしています。
並べ直しの手がかりの1つとして論文があげたのが、105枚目のおもてのページの、書き出しの文字です(Digital Medievalistの論文)。
このページは、レシピらしい文章の部分にあり、星の印で1つずつ区切られています。

ヴォイニッチ手稿はどこで見れる?全ページのPDFと日本語の本
ヴォイニッチ手稿の全ページは、イェール大学の図書館のサイトで、だれでも無料で見られます(イェール大学図書館)。
1ページずつ拡大でき、「DOWNLOAD AS PDF」のボタンでPDFにして保存もできます。
原本は傷みやすいので、見せてもらえるのはよほどの研究のときだけです(バイネッケ図書館)。
まずはサイトの画像で見てね、というわけです。
公開されたPDFを、自分で印刷して冊子にした人もいます。

欠けたページに白紙を入れて、4冊で236ページにしたそうです(papyrus1600さんのXの投稿)。
イベントでは、水月亭さんのブースに、手で持てる小さな豆本も並んでいました(mayonoenoewさんのXの投稿)。

日本語で研究のくわしいことを知りたいなら、新書が出ています。
『ヴォイニッチ写本 世界一有名な未解読文献にデータサイエンスが挑む』(星海社新書、1,485円)です(講談社)。
研究している安形麻理さんと安形輝さんが、400年の解読の歴史と、データを使った新しい研究を書いています。
まとめ
まずは、ヴォイニッチ手稿とはどんな本か、のおさらいです。
ヴォイニッチ手稿とは、読めない文字で書かれた作者不明の本です。
1912年にヴォイニッチが買い、今はイェール大学のバイネッケ図書館にあります。
ヴォイニッチ手稿の内容は、植物、天体、お風呂、宇宙、薬、レシピらしい文章の6つの部分の絵から見当がつけられています。
ヴォイニッチ手稿がなぜ読めないかというと、対訳がなく、何語か暗号かもわからず、ページの順番もバラバラかもしれないからです。
ヴォイニッチ手稿の作者は不明で、羊皮紙が1404年から1438年ごろのものとわかり、ロジャー・ベーコン説は消えました。
次に、解読と新しい説です。
ヴォイニッチ手稿のAI解読は、2018年のヘブライ語説が話題になりましたが、成功とは認められていません。
ヴォイニッチ手稿の解読成功のニュースも、2019年の説は大学がサイトから記事を消しました。
今も認められた読み方はありません。
ヴォイニッチ手稿はページの順番がちがうかもしれない、というのが2026年の新説で、二つ折りの1枚ずつを順に読む束だったと考えられています。
ヴォイニッチ手稿はどこで見れるかというと、イェール大学図書館のサイトで全ページを無料で見られ、PDFにもできます。
600年前の人がなにを書きのこしたのか、まずは自分の目でページをめくってみてくださいね。

