デジタル万引きとは、本屋やコンビニで、雑誌や本を買わずにスマホで撮って、中身だけ持ち帰ることです。
名前に「万引き」とついていますが、撮っただけで窃盗罪になるわけではありません。
ただ、撮影禁止の店で撮れば注意されますし、撮った写真をSNSに上げると著作権の問題になります。
「気になる本の表紙を、メモ代わりに撮っちゃった」
「雑誌のレシピ、1ページだけ撮ればいいかな」
こんなこと、ありませんか?
どこまでがよくて、どこからがダメなのか、はっきりわからないですよね。
この記事では、デジタル万引きが罪になるのかを、法律の条文と弁護士の話から答えます。
本屋で撮っていい写真とダメな写真は、6つの場面の表にしました。
本の名前を覚えておきたいときの手順や、図書館のルールも紹介します。
読み終わるころには、本屋でスマホを出す前に迷わなくなりますよ。
この記事のポイントは以下の4点です。
- デジタル万引きは、2003年に雑誌と携帯電話の業界が「撮らないで」と呼びかけた行為
- 撮っただけで窃盗罪にはならない。でも撮影禁止の店では注意され、店を出るよう言われることもある
- 撮ったページをSNSに上げると、著作権の侵害になるおそれがある
- 本の名前を覚えたいときは、撮らずに店員さんに聞くのがいちばん
デジタル万引きとは?罪になる?捕まる?判例は?
- デジタル万引きとは?雑誌を買わずにスマホで撮ること
- デジタル万引きは罪になる?窃盗罪にならないわけ
- デジタル万引きで捕まる?撮影禁止の店で注意されたら
- デジタル万引きの判例はある?
- デジタル万引きの写真をSNSに上げたら?
デジタル万引きとは?雑誌を買わずにスマホで撮ること

デジタル万引きの言葉は、2004年の総務省の白書にも出てきます。
そのころは、カメラ付きの携帯電話が一気に広まった時期でした。
2003年度の終わりには、カメラ付き携帯の契約は4,786万件になっていました(総務省「平成16年版 情報通信白書」)。
白書によると、本屋やコンビニの店先で、雑誌を買わずに記事を撮って帰る人が出てきました。
これが「デジタル万引き」と呼ばれ、本屋やコンビニの売上に響いていたんです。
そこで2003年7月から、日本雑誌協会と電気通信事業者協会が手を組みました。
カメラ付き携帯で雑誌の記事を撮らないよう、呼びかけるキャンペーンを始めたんです(総務省「平成16年版 情報通信白書」)。
電気通信事業者協会は、携帯電話の会社などが入っている団体です。
デジタル万引きは法律の言葉ではなく、マナーの話として呼ばれている言葉なんですね。
デジタル万引きは罪になる?窃盗罪にならないわけ

ふつうの万引きは、刑法の窃盗罪です。
窃盗罪は「他人の財物を窃取した者」が対象です。
罰は10年以下の拘禁刑か、50万円以下の罰金です(e-Gov「刑法」235条)。
拘禁刑は、懲役と禁錮をまとめた新しい呼び名で、2025年6月から使われています。
でも、デジタル万引きでは、本そのものは棚に残ります。
持ち去っているのは中身の情報だけなので、ふつうの万引きとは別ものです。
では、著作権はどうでしょうか。
法律では、写真に撮ることも「複製」に入ります(e-Gov「著作権法」2条)。
ただし、自分や家族のように限られた範囲で使うためなら、使う人が自分で複製してよい、という決まりがあります。
これを「私的使用のための複製」といいます(e-Gov「著作権法」30条)。
自分で見るためだけに撮ったのなら、著作権の侵害にはなりにくいわけです。
レコード店での撮影について、弁護士はこう話しています。
店が禁じていなければ、店内で撮影するだけでは直ちに違法にはならない、ということです(弁護士ドットコムニュース)。
デジタル万引きで捕まる?撮影禁止の店で注意されたら

罪にならないなら、どこで撮ってもいいのかというと、そうではありません。
店は、店の中でのふるまいを決められます。これを「施設管理権」といいます。
飲食店で料理を撮る話で、弁護士はこう答えています。
店がはっきり撮影を禁止しているのに撮ると、施設管理権の侵害として違法と判断される可能性がある、ということです(デイリースポーツ「店内撮影禁止です!」弁護士が解説)。
注意されたり、店を出るよう言われたりすることもあるそうです。
本屋でも、撮影禁止の貼り紙があれば同じように考えておくと安心です。
こわいのは、注意されたあとの動き方です。
出ていくよう言われたのに居座ると、不退去罪になる可能性があります。
不退去罪の罰は、3年以下の拘禁刑か10万円以下の罰金です(e-Gov「刑法」130条)。
店ともめて、店の仕事をじゃましたとされると、威力業務妨害罪になることもありえます(デイリースポーツ「店内撮影禁止です!」弁護士が解説)。
注意されたら、その場で撮るのをやめて、謝るのがいちばんです。
デジタル万引きの判例はある?
弁護士の解説にも、店で撮っただけで罰せられた例は出てきません。
飲食店の撮影でも、訴えられたケースは聞いたことがないそうです(デイリースポーツ「店内撮影禁止です!」弁護士が解説)。
ただ、撮ったあとの使い方で、逮捕された例はあります。
2024年2月、熊本県警と新潟県警は、東京都の会社経営者と従業員の2人を、著作権法違反の疑いで逮捕しました。
「週刊少年ジャンプ」を発売の5日前に手に入れてデータにし、海賊版サイトに勝手に上げていた疑いです(INTERNET Watch「『早バレ』容疑者逮捕を受け、ACCSがコメント」)。
発売前の中身をネットに流すことは「早バレ」と呼ばれています。
問題になるのは、撮ることより、撮ったものを人に見せることなんです。
デジタル万引きの写真をSNSに上げたら?

撮ったページを、XやInstagramに上げるのはどうでしょうか。
自分で見るために撮った写真でも、ネットに上げると、コピーし直したのと同じ扱いになります(e-Gov「著作権法」49条)。
ネットで多くの人に見せることは、著作権法では「公衆送信」といいます。
これは、書いた人や出版社など、権利を持つ人だけができることです(e-Gov「著作権法」23条)。
なので、ページの写真を勝手に上げると、著作権の侵害になるおそれがあります。
著作権を侵害したときの罰は、いちばん重い場合で、10年以下の拘禁刑か1,000万円以下の罰金、または両方です(e-Gov「著作権法」119条)。
多くの場合、権利を持つ人が訴えないと裁判にはなりません。
ただし、売り物の作品をそのままネットに上げて、権利を持つ人の利益を大きく損なうときなどは、訴えがなくても裁判になります(e-Gov「著作権法」123条)。
「引用ならいいのでは?」と思うかもしれませんね。
引用は、報道や批評、研究などの目的があって、ふつうのやり方に合い、正当な範囲で使うことが条件です(e-Gov「著作権法」32条)。
批評などの目的がなく、ページを撮って上げただけでは、引用とは言いにくいです。
売り物の本やレコードでも、外から見た姿を撮るくらいなら著作権の侵害にはならない、と弁護士は話しています(弁護士ドットコムニュース)。
それでも、ほかのお客さんや店員さんが写ると、肖像権の問題になることがあります(デイリースポーツ「店内撮影禁止です!」弁護士が解説)。
肖像権は、自分の顔や姿を勝手に撮られたり、出されたりしない権利です。
本屋で写真撮影はだめ?撮っていい場面とダメな場面
- 本屋で写真撮影はだめ?OKとNGの6つの場面を表で
- 本屋の撮影が禁止なのはなぜ?
- 本屋で表紙を撮るのはだめ?タイトルを覚えたいときの手順
- 本屋で写真を撮りたいときは?許可のもらい方
- コンビニの雑誌を撮るのはデジタル万引き?
- 図書館の本や雑誌は写真に撮っていい?
本屋で写真撮影はだめ?OKとNGの6つの場面を表で

本屋で写真を撮るときに迷いやすい場面を、表にまとめました。
| 場面 | OK? | わけ |
|---|---|---|
| 入り口や棚に「撮影禁止」の貼り紙がある | × | 店の決まり(施設管理権)。注意され、店を出るよう言われることもある |
| 雑誌のレシピや記事のページを撮って、買わずに帰る | × | これがデジタル万引き。法律の違反にはなりにくいが、店の売上に響くマナー違反。禁止の店ではダメ |
| 撮ったページをSNSやブログに上げる | × | 著作権の侵害になるおそれ(公衆送信) |
| 買いたい本の表紙を、メモ代わりに撮る | △ | 表紙を撮るくらいなら著作権の侵害にはならない。でも禁止の店ではダメ。店員さんに聞くのが確実 |
| 店員さんに許可をもらって、棚を撮る | ○ | ほかのお客さんや店員さんが写らないように |
| 買ったあとの本を、自分で見るために撮る | ○ | 自分で見るためのコピー(私的使用)。ただしネットに上げるのはダメ |
(e-Gov「著作権法」、弁護士ドットコムニュース、デイリースポーツ「店内撮影禁止です!」弁護士が解説をもとに作成)
迷ったら、まず店の貼り紙を見て、なければ店員さんに一声かける、の順で考えると安心です。
弁護士も、店で撮るときは前もって店主に一声かけた方がトラブルにならない、と話しています(弁護士ドットコムニュース)。
本屋の撮影が禁止なのはなぜ?

本屋が撮影をいやがるわけは、大きく3つあります。
1つ目は、売上が減ることです。
撮って中身がわかれば、買わずに帰る人が出ます。
2004年の総務省の白書でも、デジタル万引きが本屋やコンビニの売上に響いていると書かれています(総務省「平成16年版 情報通信白書」)。
2つ目は、転売やレシピのための撮影です。
元書店員の人は、転売のための撮影や、料理の雑誌のレシピの撮影に悩んでいたそうです(紙上健吾さんのXの投稿)。
3つ目は、ほかのお客さんが写ってしまうことです。
写った人の肖像権の問題になることがあります(デイリースポーツ「店内撮影禁止です!」弁護士が解説)。
本を紹介している人も、一部の店をのぞいて本屋での撮影は原則禁止だと知らない人が多い、という印象を書いています(紙上健吾さんのXの投稿)。
本屋で表紙を撮るのはだめ?タイトルを覚えたいときの手順

「表紙を撮るくらいなら、いいでしょ?」と思いますよね。
でも、店の人から見ると、撮っている人がメモなのか、中身を撮っているのか、わかりません。
画像は、本を紹介している人のXの投稿です。
本屋での撮影の問題を動画にしたところ、元書店員の人からこんなコメントが届いたそうです(紙上健吾さんのXの投稿)。
「著者やタイトルを覚えておきたい」ときは、書店員に聞いてほしい、ということです。
本の名前を覚えておきたいときは、次の順で動くと安心です。
- 書名や置き場所がわからなければ、撮らずに店員さんに聞く
- 自分で覚えておくなら、スマホのメモに書名と著者名を打っておく
- どうしても撮りたいときは、貼り紙を見てから、店員さんに「表紙だけ撮っていいですか?」と聞く
- あとで買うなら、取り置きや取り寄せができるか店員さんに聞く
書名と著者名がわかれば、あとでネットでも探せますよ。
本屋で写真を撮りたいときは?許可のもらい方

写真は、絵本を書いた人が、本屋で自分の絵本が並ぶ棚を撮ったものです。
投稿には「許可いただき撮らせていただきました」とあります(そうたまゆさんのXの投稿)。
本を書いた人でも、店の人に許可をもらってから撮っているんですね。
SNSに上げたいときは、こう聞くとスムーズです。
- レジが空いているときに、店員さんに声をかける
- 「この棚を撮って、SNSに載せてもいいですか?」と、何に使うかまで伝える
- OKなら、ほかのお客さんや店員さんが写らない向きで撮る
- 本の中のページは開かずに、表紙や棚だけを撮る
何に使うかまで伝えておくと、あとでもめにくくなります。
コンビニの雑誌を撮るのはデジタル万引き?
コンビニの雑誌の棚で、記事を撮るのはどうでしょうか。
2004年の総務省の白書でも、本屋とコンビニの店先の両方が挙がっています(総務省「平成16年版 情報通信白書」)。
コンビニの雑誌も、本屋の雑誌と同じ売り物です。
撮って買わずに帰れば、デジタル万引きになります。
キャンペーンのお知らせや、載っているお店の情報が知りたいだけのこともありますよね。
そんなときは、雑誌を買うか、出している会社のホームページで探しましょう。
図書館の本や雑誌は写真に撮っていい?

図書館の本は売り物ではないので、撮ってもいいのでは、と思いますよね。
実は、図書館によってルールが違います。
2012年の時点で、文化庁は、自分で使う範囲なら撮ってもよいと答えています。
ただし、図書館が施設のルールとして禁止することはできる、という考えです。
一方、日本図書館協会は、図書館のルールで断るのがよい、と答えています(国立国会図書館「カレントアウェアネス」CA1770)。
撮る前に、カウンターで聞くのが確実です。
撮れないときは、図書館のコピーを使いましょう。
北九州市の図書館では、こんなルールがあります(北九州市「図書館の本のコピーはできますか」)。
| コピーするもの | できる量 |
|---|---|
| 本 | 1つの作品の半分まで |
| 地図 | 見開きのうち1ページ分 |
| 雑誌の最新号 | 1つの記事の半分まで |
| 次の号が出た雑誌 | 1つの記事を全部(ただし雑誌全体の半分まで) |
(北九州市「図書館の本のコピーはできますか」をもとに作成)
コピーできるのは、お金もうけのためではない、自分の調べものや研究のためだけです。
図書館にある本に限られ、持ちこんだ本はコピーできません。
コピーするのは図書館なので、セルフコピーでも前もって申し込みます。
1人1部で、料金は1枚10円です。
どの図書館も、同じ著作権法31条にそってコピーしています(e-Gov「著作権法」31条)。
なので、ほかの図書館でも似た決まりのことが多いです。
行く前に、図書館の利用案内を見てみてくださいね。
まとめ
まずは、デジタル万引きとは?罪になる?捕まる?判例は?のおさらいです。
デジタル万引きとは?雑誌を買わずにスマホで撮ること→2003年に雑誌と携帯電話の業界が「撮らないで」と呼びかけた行為です。法律の言葉ではありません。
デジタル万引きは罪になる?窃盗罪にならないわけ→本は棚に残るので窃盗罪にはなりません。自分で見るためなら著作権の侵害にもなりにくいです。
デジタル万引きで捕まる?撮影禁止の店で注意されたら→撮影禁止の店では注意され、店を出るよう言われることもあります。居座ると不退去罪になる可能性があります。
デジタル万引きの判例はある?→店で撮っただけで罰せられた例は、弁護士の解説にも出てきません。でも、雑誌をデータにしてネットに上げて逮捕された例はあります。
デジタル万引きの写真をSNSに上げたら?→ページの写真を上げると、著作権の侵害になるおそれがあります。
次に、本屋で写真撮影はだめ?撮っていい場面とダメな場面、です。
本屋で写真撮影はだめ?OKとNGの6つの場面を表で→貼り紙を見て、なければ店員さんに一声かけます。
本屋の撮影が禁止なのはなぜ?→売上が減る、転売やレシピの撮影、ほかのお客さんが写る、の3つです。
本屋で表紙を撮るのはだめ?タイトルを覚えたいときの手順→撮らずに店員さんに聞くか、書名と著者名をメモします。
本屋で写真を撮りたいときは?許可のもらい方→何に使うかまで伝えて、ほかの人が写らないように撮ります。
コンビニの雑誌を撮るのはデジタル万引き?→コンビニの雑誌も売り物です。撮って帰ればデジタル万引きです。
図書館の本や雑誌は写真に撮っていい?→図書館によって違うので、カウンターで聞きましょう。
本屋でスマホを出す前に、まずは入り口の貼り紙をひと目見ることから始めてみてくださいね。


