新潟県立病院が46億円もの赤字を抱えているニュースをご存知でしょうか。
実は、これは新潟だけの問題ではありません。全国の地方公立病院の多くが同じような経営難に苦しんでいます。
私たちの身近な地域医療がなぜこれほど厳しい状況に置かれているのか、その背景を見ていきましょう。
地方公立病院を苦しめる「3つの問題」
地方の公立病院が赤字になる理由は複雑ですが、大きく3つの問題に整理できます。
1. 人口減少と高齢化の「ダブルパンチ」
患者は減るのに、病院は維持しなければならない
地方では若い人が都市部に出て行き、人口が減り続けています。
人が少なくなれば当然、病院を利用する患者も減ります。
患者が減れば病院の収入も減りますが、救急体制や必要な診療科は地域のために維持しなければなりません。
つまり「収入は減るが、支出は変わらない」という厳しい状況に陥るのです。
高齢者は増えるが、儲からない
一方で、残った住民の高齢化は進みます。
高齢者は医療を必要とする機会が多いので、一見すると病院にとってはプラスに思えます。
しかし現実は違います。
高齢者の医療費は保険でカバーされる部分が大きく、病院が国から受け取る診療報酬は、実際にかかる費用を十分にカバーできないことが多いのです。
特に複数の病気を抱える高齢者の長期入院は、病院にとって負担が重くなります。
2. 国の政策に縛られる「診療報酬制度」
医療の値段は国が決める
病院の収入の柱となる診療報酬(医療行為の値段)は、国が2年に一度決めています。
この価格設定が、地方の病院の実情に合っていないことが問題です。
最新の医療機器を導入したり、専門医を確保したりするには多額の投資が必要ですが、診療報酬が低く抑えられていると、その投資を回収することができません。
効率重視で、丁寧な医療が評価されない
現在の制度は医療の効率化を重視するため、患者一人ひとりとじっくり向き合う地域密着型の医療よりも、多くの患者を短時間で診察する方が収益的に有利になるという矛盾があります。
3. 深刻な「医療人材不足」
医師は都市部に集中する
若い医師は最先端の医療技術を学べる都市部の大病院を選ぶ傾向があります。
地方の公立病院は給与や待遇面で見劣りすることが多く、医師の確保が困難です。
一時的に医師を確保できても、数年で都市部に戻ってしまうケースが後を絶ちません。
医師不足が悪循環を生む
医師が不足すると、残った医師の負担が増大し、過労で燃え尽きてしまう「バーンアウト」も問題となります。
産婦人科や小児科など特定の診療科では医師不足が特に深刻で、診療科の閉鎖を余儀なくされることもあります。
人材不足により受け入れ患者数が制限され、収入がさらに減るという負のスパイラルに陥っているのです。
単純な経営努力では解決できない構造的問題
これらの問題を見ると、地方公立病院の赤字は単なる経営努力不足ではないことが分かります。
人口減少・高齢化、国の政策、人材不足という、個々の病院では解決できない大きな社会的課題が複雑に絡み合っているのです。
このままでは地域医療の崩壊は避けられません。しかし、この厳しい現実の中でも経営改善に成功している病院もあります。
地域医療の問題は、私たち一人ひとりの生活に直結する重要な課題です。
まずは現状を正しく理解することから始めたいですね!