エロイムエッサイムの意味と由来について知っていますか?
このフレーズは、漫画『悪魔くん』や『四月は君の嘘』、ゲーム『FGO』、映画『魔界転生』などで使われています。呪文やおまじないとして登場するこの言葉の意味や起源について、調査してみました。
エロイムエッサイムとは?
「エロイムエッサイム」というフレーズは、多くの人にとって耳慣れない言葉かもしれませんが、1960年代の漫画やアニメ、『悪魔くん』によって広く知られるようになりました。
『悪魔くん』は、水木しげるによる漫画およびアニメ作品で、主人公の天才児「悪魔くん」が悪魔を召喚する際に使う呪文として「エロイムエッサイム、我は求め訴えたり」というフレーズが登場します。
この呪文は、物語の初期には効果を発揮しませんが、物語が進行するにつれて次第にその力を見せ始めます。
さらに、『悪魔くん』のアニメ主題歌にもこの呪文が繰り返し登場します。
主題歌の歌詞は水木しげるが執筆しており、「エロイムエッサイム エロイムエッサイム さぁ!バランガバランガ呪文を唱えよう」という部分が特に有名です。
この呪文がリピートされることで、視聴者に強烈な印象を与えました。
エロイムとエッサイムの言葉の意味
「エロイム」と「エッサイム」の言葉の意味については、いくつかの説があります。
まず、「エロイム」については、ヘブライ語の「エロヒーム(אֱלֹהִים)」が訛ったものという説があります。
エロヒームはヘブライ語で「神」を意味し、複数形の語尾「im」が付いているため、「神々」を指すこともあります。
キリスト教においては、父・子・聖霊の三位一体を表す言葉ともされています。
「エッサイム」については、フランス語で「群れ」を意味する「essaim」から来ているという説があります。
また、他の説としては、ヘブライ語の「悪魔」や、古代イスラエルの王ダビデの父「エッサイ」を指すというものもあります。
これらの説の中で最も有力なのは、「エロイム」がヘブライ語で「神」を意味し、「エッサイム」がフランス語で「群れ」を意味するというものです。
この組み合わせにより、「エロイムエッサイム」というフレーズは、偉大な存在に対して訴える表現として用いられたと考えられます。
エロイムエッサイムの語源と由来
「エロイムエッサイム」の起源を探ると、この言葉は中世ヨーロッパで広まった魔術書「グリモワール」に由来することが分かります。
特に「赤い竜」と呼ばれるグリモワールの中に登場し、悪魔を召喚する呪文として記されています。
「グリモワール」とは、魔術の書物を指し、12世紀から13世紀にかけてイベリア半島やシチリア半島でアラビア語の魔術書がラテン語に翻訳され、それがさらにヨーロッパ全土に広がっていったものです。
「赤い竜」はグリモワールの一つであり、その異本である「大奥義書」に「エロイムエッサイム 我は求め訴えたり」という呪文が記載されています。
この呪文は、黒い雌鶏を生贄にして悪魔を召喚するために使用されるとされています。
なお、この呪文はフランス語ではなく、エロイムとエッサイムという言葉の由来もそれぞれ異なります。
グリモワールについて詳しく
「グリモワール」とは、中世ヨーロッパで人気を博した魔術書の総称です。
これらの書物は、12世紀から13世紀にかけてイベリア半島やシチリア半島でアラビア語の魔術書がラテン語に翻訳されたものが基になっています。
グリモワールには悪魔や天使を召喚するための呪文や儀式の手順が詳細に記されており、当時のヨーロッパのキリスト教徒や学者たちの間で広まりました。
16世紀以降、これらの魔術書は医師や軍人などの知識人層だけでなく、フランスやドイツの民衆の間でも一般的に読まれるようになりました。
これらの書物は魔女狩りの時代に多くが失われましたが、残されたものはヨーロッパ全土で広く知られることとなり、19世紀には再び関心が高まりました。
特にフランスでは「大奥義書」や「赤い竜」といったグリモワールが人気を集め、悪魔召喚の儀式などが詳述されました。
エロイムエッサイムが使われた日本の作品
「エロイムエッサイム」が日本で初めて紹介されたのは、澁澤龍彦による『黒魔術の手帖』です。
この書籍は1961年に初版が発行され、澁澤龍彦はタロット占いや占星術、黒ミサなど、黒魔術と呼ばれるさまざまな事象を取り上げています。
『黒魔術の手帖』では、「Eloim Essaim frugativi et appelavi」という呪文が紹介され、「エロヒムよ、エサイムよ、わが呼び声を聞け」と訳されています。
澁澤龍彦の『黒魔術の手帖』は、後のオカルトブームの先駆けともなり、日本での魔術やオカルトへの関心を高める一因となりました。
この本がきっかけで、「エロイムエッサイム」というフレーズが広まり、水木しげるの『悪魔くん』にも影響を与えたのです。
日本においてこの呪文が最初に紹介されたことで、多くの人々に魔術の世界への興味を喚起しました。
エロイムエッサイムと「四月は君の嘘」
『四月は君の嘘』において、「エロイムエッサイム」というフレーズが再び脚光を浴びることとなりました。
この漫画・アニメ作品は、新川直司によって描かれ、2011年から2015年にかけて連載されました。
作品の中で、14歳の天才ピアニストである有馬公正と、同い年のヴァイオリニスト宮園かをりの切ないラブストーリーが描かれています。
物語の中で、宮園かをりが演奏前に「エロイムエッサイム、我は求め訴えたり」と唱えるシーンがあります。
このフレーズは、本来は悪魔を召喚するための呪文ですが、『四月は君の嘘』では別の意味で用いられています。
ネット上では、この言葉が「神や観客に自分の演奏を聴いてもらうためのおまじない」として使われているという説が有力です。
宮園かをりがこの呪文を唱えることで、自分の演奏が聴衆や神に届くよう願っているのです。
さらに、このシーンが作品全体において重要な意味を持つため、実写映画化された際にこのフレーズがカットされたことにファンから大きな反響がありました。
原作やアニメファンにとって、この呪文は物語の核心を象徴する重要な要素であったため、そのカットは残念に感じられました。こ
のように『四月は君の嘘』で再び注目を集めた「エロイムエッサイム」は、現代でも多くの人々に強い印象を与え続けています。
実写映画化とファンの反応
『四月は君の嘘』が実写映画化された際、「エロイムエッサイム、我は求め訴えたり」というセリフがカットされたことに対して、ファンからは強い落胆の声が上がりました。
このセリフは、原作やアニメ版において非常に重要な役割を果たしており、主人公の宮園かをりが演奏前に唱えることで神や観客に自分の演奏を届けるという願いが込められていました。
実写映画では、山崎賢人が主演し、広瀬すずがヒロインを務めましたが、この呪文のカットにより、原作のファンやアニメファンの間で物語の重要な部分が欠落してしまったと感じられました。
特に、このセリフは物語の核心を象徴するものであり、宮園かをりのキャラクター性や彼女の内なる思いを表現する重要な要素だったため、その不在は物語の深みを減少させたと多くのファンは感じました。
その他の作品での使用
「エロイムエッサイム」というフレーズは、『悪魔くん』や『四月は君の嘘』以外にも多くの作品で登場しています。
たとえば、山田風太郎の小説『魔界転生』では、悪魔を召喚する呪文として使用され、映画化や舞台化された際にも重要な役割を果たしています。天草四郎時貞がこの呪文を唱えるシーンは特に印象的です。
また、水木しげるの『ゲゲゲの鬼太郎』の実写映画『妖怪奇伝 魔笛エロイムエッサイム』でも、このフレーズが登場します。
この映画では、鬼太郎が悪魔くんの助けを求める手紙を受け取り、彼の担任の先生を救うために行動します。映画の中で繰り返し使用される「エロイムエッサイム」は、ストーリーの重要な要素となっています。
さらに、浦沢直樹の漫画『20世紀少年』では、「エロイムエッサイムズ」というバンド名が登場します。
このバンドは万博会場でコンサートを開いたことがあり、メンバーの一人が「十字路で悪魔に魂を売った」という逸話を持つなど、バンド名に込められたダークな背景が特徴です。
女優の小泉今日子がファンの薬をしていたというエピソードもあり、幅広い層に影響を与えました。
ゲームの世界でも「エロイムエッサイム」は登場します。
例えば、クリック式アドベンチャーゲームでは、「エロイムエッサイム 我は求め訴えたり」というフレーズが繰り返し使われ、プレイヤーを不気味な世界に引き込む役割を果たしています。
このように、エロイムエッサイムはさまざまなメディアで多彩な表現を見せています。
まとめ
エロイムエッサイムは、魔術書「グリモワール」に由来し、日本では『黒魔術の手帖』で紹介され、『悪魔くん』や『四月は君の嘘』など様々な作品で使われてきました。この言葉は、その独特の響きと意味で多くの人々を魅了しています。